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うつろの製法

原美樹子

2001年12月3日(月)〜12月15日(土)
12:00〜19:00(土曜日17:00まで)

20011203.jpg

猟犬としての遺伝子を持ちながら一度も狩りをすることのなかった老犬でした。
すらりと伸びた足が重い肢体を支えられずに横たわってしまい、家族が身体を持とうとしたら、弓なりに身体を仰け反らせ、少し暴れてから、喉をしぼったようなうめき声を一声上げて、ばったり倒れ込んでしまいました。彼が地面をその足で蹴ったのはそれが最後でした。その10日後息を引き取りました。ちょうど亡くなった日、夢の中で、その奥さんが柄の長い箒で犬小屋のまわりの白い毛を掃いていました。
たいへん大きな犬だったので、亡骸を何人かで抱え上げないと動きませんでした。臆病で気位の高かったその犬は、生前、飼い主一家以外の人間との接触を嫌っていました。死んではじめて彼の身体に触れました。シーツと毛布に包まれた遺体に花が手向けられ、香が焚き染められ、形ばかりの弔いのもち、家族の車のトランクに乗せられて、ごみ焼き場まで運ばれていきました。残されたものの足に、彼の白い毛がびっしり張り付いて離れませんでした。パソコン製品のロゴを纏ったヘリウム風船がすっかりひしゃげた姿で唐突に空から降りてきました。
それだけのことでした。
写っているものは、街角で一瞬擦れ違った人々の何気ない姿であり、日々目の前をかすめては消えていった事物や風景たちです。
スナップショットは偶然の集積です。私は偶然に頼るでなく、流されるでなく、しかし偶然に身を委ね、一歩外にでてその場に、立ちます。
カメラの眼は、私のそれより清廉であり、平明であり、冷徹であり、強靱です。私はそのことに抗うつもりはありません。
私は、外界に対して甚だ無力であり、特定のアプローチやメッセージを未だ持ち合わせていません。私はその場にいるだけです。そしてその場に居合わせてしまった事への歓喜、驚愕、畏怖、憤りに対して、真摯でありたいと思うだけです。


2001年度企画の第四弾です。今年はテーマでなく、これから活躍を期待している「注目」作家を紹介しています。
原美樹子はスナップの手法で日常のなかに垣間みる、一見何気ない風景をカラーで撮影し、それぞれの写真を空間の中で結び合わせ、繋げて、独自の世界を表現しています。東京を中心に活躍、今回は大阪で初の展覧となります。是非、ご期待ください。

 

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