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The name of grassland / 草むらの名前-unknown islands where itadori grows。

渡邊耕一

2005年10月11日(火)〜10月29日(土)
12:00〜19:00(日曜・月曜休廊・土曜日17:00まで)

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北海道を旅する時、わたしはある植物のことがいつも気になっていた。誰ひとり気にするふうでもなく、6月の草刈りの季節には苅りとられ、草刈りを免れた河原や道端で風に揺れている巨大な植物。植物図鑑を広げ、その名前を口にした時、わたしはイタドリの存在に不意に気付いた。

何度通ったか知れない馴染みの道端にも、子どもの頃過ごした河原にも、イタドリは見つかった。それはずっとそこに存在していたに違いなかった。馴染みの場所は未知の土地に変わってしまった。それ以来、わたしは常にイタドリの繁る処を探し、分類してきた。これはさながら未知の島を踏査する博物学者の仕事だ。

草むらへ侵入し、イタドリの繁る処の中心へ達した時、わたしは植物にびっしりと囲まれ、身動きができなくなる。雑多な音が聞こえ始め、皮膚も感度を上げている。ほんの少し動けば、目の前に投げ出されているあらゆるものが崩れ去ってしまう。わたしはただ息を潜めてその場所にいた。分類され、名指されたものは放棄された。この空間では、潜り込む身ぶりそのものがひとつの認識となる。

今ではどんな場所にいても、遠くから一瞥するだけでその植物を区別できる。明け方の透明な大気の中、見張りの水夫が水平線上に現れた陸地を認めるように。陸地が安全な入江をどこかに隠しているように、イタドリの繁る処は認識をもたらすあの空間を内に隠している。草原の中や都市の隙間に息づいているイタドリの島々を見つけること。そして、未知の島々に辿り着いた航海者のように、その海岸線に沿って入江をひとつひとつ確かめること。それはいつか一枚の地図となり、進むべき方向を定めてくれるに違いない。

今やわたしはイタドリを見過ごして通り過ぎることができない。

 

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